2016年10月4日火曜日

“見守り”と“声かけ”

少年漫画雑誌で40年間連載された「こち亀」(『こちら葛飾区亀有公園前派出所』)が10月3日号(42号)をもって終了し、大きな話題となった。
この漫画の主人公・両津勘吉巡査は、無茶苦茶なところもあるが、その時々の時代を反映し、市民感覚と人情を備えて世俗を見つめ続けた警察官として描かれていた


福岡には、この漫画の“両さん”とは違う“名物のお巡りさん”が実在している。
それは、福岡県警・鉄道警察隊・博多派遣所の木林恵介・巡査部長である。
木林巡査部長は、朝夕、JR博多駅の博多口付近のコンコースに立ち、「おはようございます!」「お疲れ様!」「さようなら!お気をつけて!」と駅利用者に声を掛け続け、多くの人に知られている。
この木林巡査部長は、今年3月に警部補に昇進、博多臨港署に異動するまでの8年9か月、ほぼ毎日、この声かけを続けてきた。
私の仕事の一つに、「老人介護施設におけるリスクマネジメント」がある。
多くの介護施設では、介護の場面で事故には至っていないが“ヒヤリ”とした事例や“ハット”した事例が発生する。
この“ヒヤリ”や“ハット”の事例を分析し、原因を究明し、再発を防ぐための改善策などを取りまとめて“介護の質”をアップするために「リスクマネジメント委員会」などの取り組みがすすめられている。
“ヒヤリ”“ハット”の事例検討の中で「見守りが不足していた」「今後はちゃんと見守りできるようにしたい」との報告書を、度々、目にしてきた。
「確かに“見守り”が不足していたのだろう」とは思うが、“見守り”とは、ただ漫然と見ているだけではない。
木林巡査部長が朝夕、博多駅構内で“声かけ”を続け、博多駅利用者の安全を見守る姿こそ“見守り”の本質があるように思う。
“見守り”とは「相手をしっかりと受け止める気持ちを持ち、気遣い、配慮し、異変を捉え、変化に対応すること」だ。
多くの介護施設では、利用者の皆さんの病気や加齢による“身体的リスクや精神的なリスク”に向き合い、献身的な“見守り”がおこなわれている。